斜視とは
左右の視線が異なる方向を向いている状態を指します。
(左右の視線が同じ方向を向いている状態を正位といいます。)
斜視の種類と治療
A 外斜視
どちらかの眼の視線が外側に向いているものを言います。
多くの外斜視は、斜視の時に抑制がかかるので、複視(ものが2つに見える)を自覚しない場合が多いです。ただし輻湊不全型(近くを見る時に眼を寄せる力が弱い)では読書時に複視を自覚することがあります。
(1) 間欠性(間歇性)外斜視 … ときどき外斜視になるもの
<治療>
角度が大きい時や、斜視になる頻度が多い時、両眼視機能がよくない時は早めに手術したほうが良いです。
角度が小さい時や頻度があまり多くなく、両眼視機能が良好な時は、手術時期は早くなくてもいいですが、大人まで放置しておくと疲れの原因になります。正位にしようとして余分な力を使っているから眼精疲労の原因になります。そんな時は手術をします。
手術時期は斜視角や斜視の頻度にもよりますが、小さい頃に手術をすると、再発することが少なからずあります。これは成長につれて、斜視の角度が大きくなっていくときがあるために、途中で手術してもまた外斜視が起こってくる場合があります。ある程度の年齢になってから手術したほうが、再発の率は減少します。
手術方法
- 外直筋後転術(片眼または両眼)
- 内直筋短縮術
- 前後転術(外直筋後転術+内直筋短縮術)などがあります。
(2) 恒常性外斜視 … 常に外斜視のもの
日本弱視斜視学会ホームページより引用
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus2
恒常性外斜視とは、常に外斜視になっている状態をいいます。生後早期から外斜視が出現する場合や、間欠性外斜視から移行する場合があります。また視力が悪いために、両眼視機能が不良になった場合にも恒常性外斜視になることがあります。
<治療>
恒常性外斜視は正位になることがないので、両眼視機能のことを考えると、早期に手術したほうがいいです。手術方法は、間欠性外斜視とほぼ同じです。
B 内斜視
日本弱視斜視学会ホームページより引用
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3
内斜視とは、右眼か左眼どちらかの視線が内側に向かっている状態です。両眼が外に動くことができない場合には、両眼が内側に寄り、顔をどちらかに回して片方の眼で見ています。発症の時期、原因、調節性の有無、斜視角の程度、変動などが分類の基準となっています。
(1) 先天内斜視(乳児内斜視)
生後6か月以内に発症する内斜視で、通常斜視角が大きく、遠視をメガネで矯正しても、ほとんど眼位が改善しません。
<治療>
正常な眼位と両眼視機能を得るために手術が必要です。
手術方法
- 内直筋後転術(片眼または両眼)
- 外直筋短縮術
- 前後転術(内直筋後転術+外直筋短縮術)などがあります。
(2) 調節性内斜視
遠視を伴い内斜視で、遠視をメガネやコンタクトレンズで矯正すると眼位が改善するものを言います。
- 純粋調節性内斜視
眼鏡で斜視が完全に矯正できるもの。 - 部分調節性内斜視
内斜視は改善するが斜視が残る場合。 - 非屈折性調節性内斜視
調節によって過剰に輻湊反応が起こるもので、近くを見ようとすると内斜視になります。
二重焦点眼鏡を装用することで眼位が改善します。
<治療>
純粋調節性内斜視はメガネで眼位は矯正されます。
部分調節性内斜視はメガネで内斜視の斜視角は減少しますが、残余斜視角に対しては両眼視機能獲得には手術が必要です。
(3) 後天性内斜視
- 基礎型内斜視
原因は不明。 - 輻湊過多型内斜視
遠見は正位または軽度の内斜視で、近見は比較的角度の大きな内斜視です。
調節性要素の関与は少なく、二重焦点眼鏡にしても近見眼位はほとんど改善しません。 - 急性内斜視
急性に発症する内斜視で、突然の複視(ものが二重に見える)を自覚します。 - 近視性内斜視
近視により生じる内斜視。 - 感覚性内斜視
片眼の弱視や失明などで融像(ものをかな根合わせて見る力)が障害された場合に生じる内斜視。幼児期では内斜視と外斜視が同程度起きますが、年齢が進むにつれ外斜視が多くなります。 - 開散不全型内斜視
遠見で目立つ内斜視と、遠見のみに自覚する複視を認める状態のことを言います。
急性に発症します。
自然軽快することもありますが、改善しない場合はプリズム眼鏡や矯正手術などを行います。 - スマホ内斜視
10歳代に多いと言われていますが、成人になってからも起こる場合があります。
<治療>
経過を見て治らなければ、斜視角が大きければ、手術が必要です。
斜視角が小さい場合は、プリズムメガネをかけるかまたは、膜プリズムを貼ったメガネを装用することもできます。
C その他の斜視
- 上下斜視
上下斜視を起こすものには、単なる上斜視、下斜筋過動によるもの、先天性上斜筋麻痺によるもの、下直筋不全麻痺などがあります。
<治療>
単なる上斜視の場合は、上斜視の眼に上直筋後転術または下直筋短縮術を行います。
下斜筋過動に対しては、下斜筋後転術を行います。 - 交代性上斜位
交代性上斜位とは、片眼を遮蔽するとその眼が上転し、遮蔽を反対の眼にすると、新たに遮蔽した眼が上転するという特異的な眼球運動を示します。水平斜視や乳児内斜視を合併することが多く、これに下斜筋過動や上斜筋過動や弱視を伴うこともあります。
上転が目立つ場合は手術の適応となることもありますが、加齢とともに上転が軽減することもあるので、検査可能な年齢になるまで待ったほうがいいです。
D 複視を起こす疾患
麻痺性斜視(動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺)、重症筋無力症、甲状腺眼症など眼以外が原因となって起こるものがあります。これらは多くは突然に複視を自覚します。この時は原疾患の治療を優先します。治るまで複視に対して、プリズムメガネや膜ブリズムをメガネに貼って、複視を最小限にします。
また眼球付近の打撲によって起こる眼窩底骨折(主に下壁骨折ですが、内壁骨折の時もあります)が、これに対しては主に手術が優先されます。
弱視とは
弱視とは、眼に器質的疾患(視力に影響を及ぼす眼の病気)が無いにもかかわらず、矯正視力が良くない眼(矯正視力が1.0以上にならない眼、0.9以下の眼)のことを言います。
弱視の種類
弱視は主に4つのタイプに分けられます。
- 屈折異常弱視
- 不同視弱視
- 斜視弱視
- 形態覚刺激遮断弱視
1.屈折異常弱視
遠視が原因のことが多く、両眼性の弱視です。遠視は眼の調節をしないとどこにも焦点が合わず、遠視がある程度強いと弱視になります。近視では近くを見る時には焦点が合うところがあるため弱視にはなりにくいのです。ただし高度の近視や高度の乱視では常に焦点が合わなくて弱視になります。
2.不同視弱視
左右の屈折以上の程度に差があるために、遠視の強い方や乱視の強い方の眼が弱視になります。
3.斜視弱視
斜視があるために、両眼が同時に物を見ることができない時に、斜視になる眼が多い方の眼が弱視になります。小児期から斜視があるとき同時にものを見ると2つに見えるため、頭の方で抑制がかかり、片方の眼でしか見なくなり、2つに見えないようになっています。それで斜視眼が弱視になります。でも交代に固視(物を見る眼)が換われば弱視にはなりません。
4.形態覚刺激遮断弱視
先天白内障や高度の先天眼瞼下垂、術後の眼帯などで、網膜に適切な刺激が届かないために起こる片眼性または両眼性弱視です。先天白内障を手術しただけでは視力が改善しないのはこのためです。
- 視力検査
- 屈折検査
調節麻痺剤を用いて検査します。
小児の場合、調節力が強いので正確な屈折状態を知るためには調節麻痺剤を使った屈折検査が必要です。 - 眼科一般検査
角膜、前房、水晶体、硝子体、網膜、視神経乳頭を検査します。 - 固視検査
固視が良好かどうか調べます。中心固視であるかを検査します。 - 両眼視機能検査
弱視の治療
早期発見、早期治療が重要です。小児の視力の発達は10歳ごろでほぼ完成しますので、その時期を過ぎると、矯正視力はなかなか上がりません。早期に治療を開始すればするほど視力の向上が早くなりますが、早期発見、早期治療ができないと、視力の向上に時間がかかります。
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/amblyopia
- 屈折矯正
屈折異常がみられたら眼鏡を処方します。
眼鏡を常に装用することで視力が改善することが多い。 - 健眼遮蔽
片眼性弱視では、眼鏡だけで視力の改善が不十分な場合は、健眼(視力の良い眼)を1日2〜8時間遮蔽して(パッチを貼って)、視力不良の眼を使うことで視力の改善を期待します。